党本部
2023年05月15日

【参本会議】川合孝典幹事長代行が入管法改正案について質疑

川合孝典幹事長代行(参議院議員/全国比例)は12日、国民民主党を代表し、参議院本会議で「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案」に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。

出入国管理法等の一部を改正する法律案

令和5年5月12日
国民民主党・新緑風会 川合 孝典

国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について法務大臣に質問します。
まず現在の不法在留者や送還忌避者問題に鑑み、今後の出入国在留管理行政の議論の在り方について法務大臣の見解を求めます。

2010年代以降、日本の外国人労働者政策は急速に変容を遂げています。
日本の外国人労働者政策の原則は、従来「専門的、技術的人材については積極的に受け入れるが、単純不熟練労働者は受け入れない」という原則のもとに運用されてきました。
しかし、2009年の入管法改正によって在留資格の見直しと技能実習生の労働者性が確立されて以降、介護・建設・宿泊・製造など数次に亘り受け入れ対象職種は拡大を続け、現在に至っています。
こうした受け入れ対象職種の大半は、単純不熟練分野に近接するものであり、単純不熟練労働者は受け入れないとする、従来の政府方針は既に空洞化しています。
そしてその結果、現在の日本はイギリス・アメリカ・ドイツに次ぐ、世界第4位の外国人受け入れ国となっています。我々はこの現状を直視した上で、外国人との共生のあり方を考える必要に迫られています。

今回の入管法改正案は、出国管理に主眼を置いた内容となっていますが、一部の難民申請者を除き、そもそも不法在留者や送還忌避者の問題は、外国人労働者の受け入れ政策に起因するものが多く含まれます。従って本来入国管理の在り方と併せて議論なされるべきものと考えますが、この点について法務大臣の見解を求めます。

法務大臣は年初の大臣所信の冒頭で「外国人との共生社会の実現」を掲げられましたが、この公約を実現する上で今後の出入国管理行政上、解決すべき課題は何だと考えておられるのでしょうか? 見解を求めます。

では、具体的な法案内容について質問します。
今回の法改正は、保護すべき者を確実に保護するための制度整備、送還忌避問題の解決、名古屋入管における長期収容者死亡事案の発生を受けて、入管収容施設を巡る諸問題の解決を図ること、等を主な目的としています。

今次法改正で、保護すべき者を確実に保護するため、補完的保護対象者認定制度の創設や在留特別許可の申請手続きを整備する等、これまで指摘されてきた入管行政を巡る課題の解消に向けた制度整備を行おうとしている点は率直に評価します。
一方、送還忌避によって生じた入管施設への長期収容問題を解決する目的から送還停止効に例外規定を設けることによって、難民申請者が適切な難民認定手続きの機会を得られないまま、入管法違反者として出国命令の対象者となり得る懸念が生じるなど問題点も指摘されています。

現在の出入国在留管理行政に係る根本的な問題は、第三者のチェックが全く働かないまま、出入国在留管理庁内で全てが完結しているところにあると考えます。
不法在留者の摘発から入管施設への収容、審査、そして国外退去決定まで、警察・検察・司法の役割が全て入管職員の手で行われています。強制収容を執行するのに裁判所令状も必要はありません。しかもその審査プロセスはブラックボックスでその判断は国の出先機関である地方入管局長の権限に委ねられています。
入管行政を適正化するためには、この審査プロセスを透明化することこそが、何よりも重要と考えますが、法務大臣の見解を求めます。

欧米諸国では、難民認定申請者の面接時に弁護士等の同伴が認められている上、面接の様子は全て録音・録画され、審査を行う上での証拠として取り扱われます。
一方、日本では一部の年少者などに限って同伴者の立ち会いを認める運用が試行されている以外、一次審査における弁護士の同伴は認められておらず面接の録音・録画も一切認められていません。
言葉の壁があり、法律知識も不足がちな難民申請者が、適切な申し立てを行う上で面接時に弁護士や同伴者の立ち会いを認めるべきと考えますが、法務大臣の見解を求めます。

また難民申請者の権利を保護し、審査の適正性を担保する上で面接の録画・録音を行うことは、極めて有効と考えますが、何故日本では認められていないのか?併せて、法務大臣の見解を求めます。

補完的保護対象者の認定制度について伺います。
今回、補完的保護の概念を導入し「難民条約上の難民の定義に該当しないものの保護を必要とする者」を保護対象に含めることとなります。これにより難民申請手続きを進める上で法務大臣の広範な裁量権に一定の透明性が担保されることから前向きに評価します。
一方、補完的保護の要件については、その審査基準が曖昧なままであり、そこに難民調査官の恣意的な判断が入り込む懸念が生じています。真に保護を必要とする者を適切に保護する上で、補完的保護対象者に関する明確な条文規定が必要と考えますが法務大臣の見解を伺います。

送還停止効の例外規定の導入について伺います。
今回送還停止効に例外規定を設けることで、同一理由による3回目以降の申請者、3年以上の実刑前科者、テロリスト等をその適用対象とする規定が盛り込まれている他、3回目以降の難民申請者についても難民認定すべき「相当な理由のある資料」が提出できない者は、送還停止効の例外規定の適用対象となります。
私は、この「相当な理由のある資料」という極めて曖昧な文言を恣意的に解釈することで、本来保護すべき者を確実に保護出来なくなる可能性が生じることを懸念します。
「相当な理由のある資料」には客観的な判断基準が存在するのでしょうか、法務大臣に伺います。

送還停止効の例外規定の導入によって最も懸念することは、改正法第61条の2の9第4項の規定により、既に一度目の難民申請を行い、面接を待っている者が、一度も審査を受ける機会を与えられないまま、難民不認定になる恐れがあることです。
難民申請途中の者が法改正によって不利益を被るような事態が生じないよう配慮する必要があると考えますが、法務大臣の見解を求めます。

難民申請における「誤用」「濫用」問題について質問します。
近年、就労を目的とした難民申請の誤用・濫用が増加している旨の指摘がなされています。難民申請の誤用・濫用は、決して容認できるものではありませんが、そのことを以って送還停止効の例外規定の適用を考える前に、何故就労を目的とした難民申請者が出るのか、を考える必要があります。
私は、こうした問題の背景には、外国人労働者の受け入れ問題と正面から向き合うことのないまま、研修・実習名目で単純不熟練分野への外国人労働者の受け入れを拡大してきたことにその原因があると考えます。就労を目的とした難民申請の「誤用」「濫用」事案が発生している理由をどのように捉えておられるのか、法務大臣の見解を求めます。

難民認定制度の運用の見直しについて質問します。
今回難民認定制度の運用の見直しの中で、難民該当性に関する規範的要素の明確化、難民の出身国情報の充実、難民調査官の調査能力の向上を挙げていますが、いずれも具体性に欠けており、その運用如何では絵に描いた餅になりかねません。
そこで質問ですが、トルコ国籍を持つクルド人やミャンマー国籍を持つロヒンギャ、部族紛争から逃れてきたアフリカ系の難民認定審査を行う上でどのように出身国情報の充実を図るのか、法務大臣の見解を求めます。

最後に難民申請手続きの迅速化に向けた体制整備の必要性について伺います。
出入国在留管理庁の令和5年度末の定員は6,314人。その内、出入国や在留審査を行う入国審査官は4,085人となっています。それなりの人員体制に見えますが、その多くは空港や港で出入国管理業務にあたっており、難民認定に携わっている職員はごく一部です。
現在、難民申請から結果が出るまでに平均で4年半、長い場合10年近く要すると言われていますが、時間がかかり過ぎているのは明らかです。現在、専任で難民認定に携わっている職員は全国で何人いるのでしょうか、法務大臣に伺います。

今後、在留外国人の更なる増加が見込まれる中、適正・円滑な入管行政を実現する上で人員体制の強化を図るべきと考えますが、法務大臣の見解を求め、私の質問を終わります。

以 上