党本部
2024年05月27日

【参本会議】川合たかのり議員が入管法等改正案について質疑

川合孝典幹事長代行(参議院議員/全国比例)は24日、参議院本会議で議題となった「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案」に対して質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。


国民民主党・新緑風会の川合孝典です。会派を代表して、岸田総理および関係閣僚に質問します。

生産年齢人口の減少を背景に人材不足が深刻化する中、外国人の受け入れは経済のみならず、日本社会の持続的安定性を確保する上で喫緊の課題となっています。
これまで政府は、表向きは移民政策を否定しつつ、日本人に充分な賃金を払って雇用することが出来ない企業や業界の要望に応えるかたちで、技能実習制度の名目でなし崩し的に安価な外国人労働力の受け入れを拡大してきました。その結果、劣悪な労働環境に起因した失踪の問題などが多発し、不法在留者による犯罪や地域トラブルが社会問題化しています。
今後の日本社会の姿に大きな影響を及ぼす外国人政策は、中長期的に「国益」に資するかどうか、を判断基準とすべきであり、場当たり的な労働者不足対策であってはなりません。
既に外国人から「選ばれない国」になりつつある、日本の現実と真摯に向き合い、中長期的に「日本を経済・社会の両面から豊かな国にする」という視点から、単なる「受け入れ政策」ではなく、国益を見据えた「誘致」へと、発想を転換する必要があります。
これから参議院での審議を始めるにあたり、総理並びに関係閣僚の外国人政策に対する基本認識を伺います。

1.目指すべき、「外国人との共生社会」の将来像とはどのようなものか?

岸田総理に質問します。今回、技能実習制度を改め、育成就労という形で人材確保の目的を明示したことは、一定の評価に値しますが、これまでの議論を見る限り、当面の人手不足対策としての法改正の意図が散見され、未だ外国人労働者政策と正面から向き合っているとは言い難い内容です。
岸田総理は、「外国人との共生社会の実現」を掲げておられますが、岸田総理の目指す、「外国人との共生社会」とはどういうものなのか、具体的な将来像についてご説明下さい。

2.労働基準関連法令と出入国在留管理法との整合性を図る必要性についての認識

労働基準関係法令と入管法との整合性を図る必要性について質問します。
特定技能雇用契約については、労働基準法をはじめとする労働基準関係法令との整合性がとれているかどうかを出入国在留管理庁の審査において判断しているが、こうした公法規制が、労働契約の私法上の権利として実現させる仕組みがないことが、技能実習生の権利保護に不備を生じさせています。
技能実習生の権利を確実に保護するためには、出入国在留管理法と労働契約法をはじめとする労働基準関連法制との整合性を図る必要があるものと考えます。
外国人の受け入れ拡大が見通される中、外国人労働者政策全体を包括した外国人政策に特化した基本法を制定する必要があるものと考えますが、岸田総理の認識を問います。

3.景気変動リスクを踏まえた国内労働市場との調整についての認識

景気変動リスクへの対応方針について岸田総理に伺います。
外国人の受け入れ拡大にあたっては、今後の景気後退や経済危機が生じる可能性を織り込んでおく必要があります。景気が悪化したときには、日本人労働者との雇用の奪い合いが生じることも想定されます。実際に欧米諸国では、景気後退時に移民排斥運動が頻繁に起こっています。従って外国人労働者の受け入れ拡大にあたっては、国内労働市場との調整が極めて重要と考えますが、この点についての政府の基本認識と今後の対応方針について岸田総理に伺います。

4.実習実施者による労働基準関係法令違反があとを絶たない理由

技能実習実施者による労働基準関係法令違反に関して質問します。
これまでも日本で就労する限り、国籍を問わず、原則として労働基準法、最低賃金法等の労働基準関係法令は適用されることになっていました。しかし実習実施者による労働基準関係法令違反はあとを絶ちません。令和3年時点で労働基準監督機関が監督指導を行った9,036事業所の72.6%、6,556事業所で法令違反が認められています。
実習実施者による労働基準関係法令違反が後を絶たない理由は何だと考えるのか、岸田総理の認識を伺います。

5.労働基準関係法令違反解消のための具体的な対策

なお労働基準関係法令違反の多い事項は、安全基準違反、割増賃金の支払い、労働時間などとなっているが、今回の法改正を通じて、どのように労働関係法令違反を解消していくのかを法務大臣並びに厚生労働大臣に伺います。

6.一定の日本語能力を受け入れの要件にすることについての認識

日本語能力を受け入れ要件とすることについての認識を問います。
技能実習生等が来日後に直面するトラブルや労働災害の多くは、実習実施者と話し合いが出来ない、職場の指示が解らない等、日本語能力の低さに起因しています。
日本の将来の国益を考えたとき、経済・社会の戦力となる一定以上のスキルを有する労働者を受け入れることが望まれますが、それだけでは十分な人材確保が見込めないことから、働きながら学ぶ、「未熟練労働者」の受け入れが今後も不可避と考えられます。
従って、今後受け入れる外国人労働者については、日本で働き・生活する上で最低限の日本語能力を来日のための要件とすることが必要なのではないかと考えますが、この点について岸田総理の認識を伺います。

7.日本語教育や技能教育の実施状況を継続的に確認する体制の整備

また既に日本で技能実習を行っている者についても、実習実施者が、日本語や技能を学ぶ機会を十分に提供しているかをチェックする仕組みを構築する必要があるのではないか、と考えますが、この点について厚生労働大臣に質問します。

8.悪質な送出機関規制および借金問題の抜本解決に向けた取り組み姿勢

悪質な送出し機関の規制の在り方について質問します。
技能実習生が母国の送出機関に多額の借金をしている問題については、度重なる指摘にも関わらず、他国のことであるためとして、日本政府の対応は、せいぜい悪質ブローカーからの受入れを停止する程度に留まっています。
本来、日本がどのような条件で外国人の入国を認めるのか、は国際慣習法で認められた国家主権に基づき決定されるものであり、相手国の事情に寄り添った結果、トラブルを日本国内に持ち込むようなことがあっては、国益に反するものと考えます。
今回も、送り出し機関の規制については、最終報告書や政府方針において、監理団体等がより質の高い送出機関を選択できるように手数料等の情報公開を求めるとされているものの、手数料等そのものをなくすための取組には全くなっていません。
悪質な送り出し機関の規制や借金問題を抜本的に解決する意思があるのか、岸田総理に質問します。

9.悪質な送出し機関の具体的な規制策

併せて具体的に悪質な送り出し機関をどのように規制するのか、法務大臣に質問します。

10.監理団体の基盤強化に向けた取り組みの必要性についての認識

監理団体の基盤強化の必要性について認識を問います。
監理団体として許可を受けることができるのは、中小企業団体など営利を目的としない法人に限られていますが、非営利であるため組織基盤は脆弱で、運営面で加盟企業に依存することになっています。
最終報告書や政府方針では、受入企業と密接な関係にある監理団体役職員が、企業の指導・監督業務に関与することを制限するとされていますが、中立性を担保するため営利性を縮小した結果、かえって中立性が担保できていないという事態が生じており、これでは厳正・中立な監理業務は望めません。高い水準で監理団体の中立性を担保するためには、NPO法人並みの収益事業や内部留保を認めることで経営面での自立を促すことも検討すべき、と考えますが岸田総理及び厚生労働大臣の認識を伺います。

11.特定技能産業分野の選定プロセスの透明化についての認識

特定技能産業分野の選定プロセスを透明化する必要性についての認識を問います。
特定技能制度の改正については、最終報告書でも政府対応の関係閣僚会議決定でも、制度の本質的問題に踏み込んだ改正の議論がされていません。
特定技能制度は、今後の国内労働市場に大きな影響をもたらすものであるにも関わらず、特定技能対象分野の選定プロセスが透明性に欠けています。
最終報告書で提案された有識者等で構成する会議体を選定のプロセスに関与させて透明性・公平性を図る必要があるものと考えますが、この点について岸田総理の認識を問います。

12.1年を超えた転籍制限と労働基準関係法令との整合性

最後に転籍制限と労働基準関係法令との整合性について質問します。
転籍について、法案では当分の間「受入れ対象分野ごとに1年から2年までの範囲内で設定する」と極めて曖昧な表現となっており、これでは経過措置という受入れ側への配慮を理由に更なる転籍制限が可能となる恐れが指摘されています。1年を超えての拘束は労働基準関係法令との整合性を欠いており、人材育成の仕組みとの説明だけでは正当化できないものと考えます。転籍制限と労働基準関係法令との整合性を取る必要があるものと考えますが、岸田総理並びに厚生労働大臣の認識を伺い、私の質問を終わります。