国民民主党三重県連
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- 党本部
- 2025年04月21日
【参本会議】礒﨑哲史議員が情報処理促進法等改正案に対する質疑
礒﨑哲史副代表(参議院議員/全国比例)は16日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった情報処理促進法等改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
「情報処理促進法・特別会計法 改正案」に対する代表質問
令和 7 年 4 月16 日
国民民主党・新緑風会 礒﨑哲史
国民民主党・新緑風会の礒﨑哲史です。
会派を代表して、ただいま議題となりました「情報処理の促進に関する法律及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案」について質問いたします。
半導体産業は1947 年のトランジスタ発明に始まり、IC やマイクロプロセッサの 登場で急成長。1980 年代には日本が世界シェア 50%超を占めて黄金期を迎えました。しかし、時を同じくして日米貿易摩擦が深刻さを増し、アメリカは日本企業を ダンピングで提訴するに至り、1986 年の日米半導体協定によって、日の丸半導体は価格競争力や日米両国内の販売量に対しても大きな制約を受けることとなりました。1990 年代以降は米国や台湾、韓国の台頭により、日本の存在感はますます低下していきました。
第4次産業革命とも表される現下の経済状況において、デジタルトランスフォーメーションは世界の潮流となり、AI 技術の進歩は加速度を増し、その活用なくして 今後の経済は成り立ちません。更にカーボンニュートラルの実現に向けても、電動化やエネルギーマネジメントが重要であり、こうした環境を支えるために半導体は不可欠な存在となっています。
こうした状況を踏まえれば、本法案は産業や経済の発展に止まらず、経済安全保障の観点からも重要な内容を含んでおり、本施策の失敗は許されないとの観点で政府の認識について以下伺います。
【マイルストーンの設定と評価について】
まず過去の政府支援事例である、あすかプロジェクト、MIRAI プロジェクト、エルピーダメモリなど、失敗とも言われる事例と同じ轍を二度と踏まないための施策について伺います。
衆議院の審議では、達成目標、いわゆるマイルストーンを設定して、達成状況を確認しながら支援継続の要否を判断していく旨の答弁がありましたが、実際にどのようなマイルストーンの設定が想定されるのか例示願います。経産大臣の答弁を求めます。設定するマイルストーンの詳細については、企業経営の機密事項になるためつまびらかにできないということであれば、大雑把な国家目標のようなものでも結構ですので、できるだけ定量的な基準をご提示ください。
また、マイルストーンの評価に関して、その時期や形式、実施手順についてお答えください。経産大臣の答弁を求めます。
なお、先述のかつての失敗事例では、マイルストーンを設定していなかったのでしょうか?併せてお答えください。
マイルストーンの評価においてその進捗が思わしく無い場合、どのような対応を取るか想定しておく必要があるのではないか。また仮に外資に買収されそうな事態になった場合に備えて、ガバナンス確保の観点から、国として拒否権をもつための黄金株の保有等を想定されているでしょうか。経産大臣の答弁を求めます。
併せて、何兆円もの資金を投入して得た高度な技術やデータを保護する対策、例えば特許権の帰属の問題などについては予め所定の取り決めをしておくべきと考えますが、経産大臣のお考えを伺います。
通常「仮定の話には答えられない」という答弁が国会では常道ですが、過去の失敗事例に鑑み、先見性をもって次善策を準備しておくことが必要だと考えます。
【事業における懸念点】
壮大な国家事業ともいえる今回の計画は、2ナノ以下の最先端分野をはじめとした半導体の国内生産基盤強化に向けて、10兆円規模の集中投資をしていくことになるわけですが、財政的な側面でいえば、米国、中国、欧州、台湾、韓国も同規模かそれ以上の投資を続けています。この限りにおいては、他国に比して日本は特段の優位性を持っているとは思えません。現在予定されている支援規模で十分なのか、各国の支援策等との違い、日本型の特徴と合わせて、経産大臣にお伺いします。
半導体産業の競争力が失われていった要因の一つに、垂直統合式かつ自前主義の組織形態があったと言われてきました。今後の半導体産業の競争力向上に向けて、どの様な産業構造を形成すべきとお考えか、経産大臣の答弁を求めます。
衆議院の経済産業委員会での参考人質疑において、さくらインターネットの田中邦裕社長が、「産業の米が電気や鉄から今は半導体そして計算資源へと移っている。これだけの成長産業になぜか日本が投資しない、その投資主体がほとんど海外であるということ、これは非常にゆゆしき事態だと思っています」と述べられています。先日、参議院経済産業委員会視察で伺った千葉県白井市や隣接する印西市には、多くのデータセンターが誘致されていましたが、その殆どが外資系のデータセンターとなっていました。今後のDXに向けた要となる産業に日本の投資が消極的である実情に対する政府の認識と今後の方針について経産大臣に伺います。
今回の法案審議では、最先端ロジック半導体に焦点が当てられていますが、現状においても高い競争力を維持し続けているパワー半導体や素材などの分野において、他国の猛追を受けているとの見方もあります。こうした日本がリードしている分野の実情についてどのように分析し、更に強みを伸ばす戦略についてどのように考えているか、経産大臣に伺います。
【人材について】
デジタル人材の育成について伺います。
日の丸半導体の存在感が失われていくに伴い、優秀な人材の海外流出が起き、今後の産業の再生には人材不足、技術者不足が懸念されます。海外では半導体に特化した大学や、AI半導体大学院の拡充なども行われていると聞きます。アカデミア含めた人材育成に向けた取り組み、政府の方針について経産大臣、文部科学大臣に伺います。
また、日本は自然科学分野の人材、いわゆる理系人材が海外と比べて少ない実態があります。日本では理系文系の垣根が高く、その弊害も指摘され、日本政府もその改善に向けて取り組んでおられると承知していますが、現状どの程度改善されてきているのか、今後の取り組み方針と合わせて文部科学大臣に伺います。
【経済安全保障上の課題実例】
最後に、経済安全保障の観点から全樹脂電池、APB 株式会社にまつわる問題についてお伺いします。
NEDOから数十億円の資金の投入が決定され、全樹脂電池という革新的な次世代 電池を実用化しようとしていたAPB社が、突然の社長交代に伴い、資金難に直面し、操業はストップしたままの状態となっていることが報道されています。本年3月21日には同社HPにて、一連の報道に対する説明文が公表され、報道を一部否定していますが真相は不明なままです。
この件については、①資金を提供した政府のガバナンス、②蓄積された技術やデータの行方という観点から、本法案とも大きく係わる問題です。
本年2月の衆議院予算委員会で、有志の会の福島伸享議員がこの件を取り上げ、ガ バナンスや海外への技術流出の可能性を問題提起し、実態調査を求めたところ、武藤経産大臣からは「私なりに調査をしてみます」との答弁がありました。その調査結果について経産大臣に伺いたいと思います。
併せて、経済安全保障上の典型的な失敗事例とさせないためにも、引き続き経済産業省をはじめ政府の関係各所には責任と先見性をもった対応を求めます。
本法案は、半導体産業を再興し、AI技術を発展させ、日本のデジタル基盤を強化していくための分岐点となりうるものです。だからこそ、政府は過去の失敗事例を振り返り、できるだけオープンな体制でかつガバナンスを利かせて進めていく必要があります。政府も、本法案に基づく事業の最終責任は政府、経済産業省が負うことを認めていることから、続く審議においても明確かつ責任ある、真摯な答弁を求め、質問を終わります。