党本部
2025年04月25日

【参本会議】川合孝典議員が刑事訴訟法等改正案に対する質疑

 

川合孝典幹事長代行(参議院議員/全国比例)は23日、参議院本会議で議題となった刑事訴訟法等改正案(情報通信技術対応)に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。

令和7年4月23日

参議院本会議

情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案

国民民主党・新緑風会 川合孝典

 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
会派を代表して鈴木法務大臣に質問します。

本法案は、裁判案件の高度化・複雑化の進展に伴い、長期化する訴訟期間を短縮が、喫緊の課題となる中、情報通信技術を活用して、刑事手続き等を円滑化・迅速化すると共に訴訟に関与する国民の負担軽減を図るための規定を整備するほか、情報通信技術の進展等に伴う犯罪事象に適切に対処するための規定の整備を行うことを目的としています。

こうした法改正の趣旨や取り組みに期待する声がある一方、デジタル社会における個人情報保護の在り方や、証拠として提出・押収された電磁的記録の取り扱いについては、数多くの懸念の声とともに修正を求める声が寄せられています。 こうした指摘事項を踏まえて、刑事手続のデジタル化を推進するにあたり、今後検討すべき事項を中心に法務大臣に質問します。

なお、少しでも分かり易くする為、条文中の「電磁的記録」は可能な限り「電子データ」と読み替えて質問致します。 まず、証拠書類の発受のオンライン化について質問します。

現行法では、裁判所における証拠物の閲覧・謄写は、代替性のない証拠物が破損等しないように、との理由から裁判長の許可を要することとなっていますが、改正法では、これに加えて、電子データ全般に亘って閲覧・謄写には裁判長の許可を要することとされています。 しかしこれでは、弁護士から謄写の申請がある毎に、毎回裁判所から検察に意見を聞く時間が必要となり、裁判の円滑化・迅速化という立法の趣旨に反するものと考えます。 例えば性犯罪の動画データなど、謄写方法をオンライン以外にすべき証拠を検察官が事前に限定することで、裁判長の許可手続きを簡略化すべきと考えますが、法務大臣の見解を求めます。

次に電子データ化された証拠の開示判断における検察官の裁量範囲について質問します。 本法案では、オンラインによる電子データの閲覧、謄写が原則とはなっていません。今回、オンラインによる証拠開示を導入する目的は、証拠開示に要する時間を短縮化することによる裁判の迅速化と裁判費用の削減にありますが、検察官の自由裁量によって紙媒体による開示と電子データによるデジタル開示を選択できるような運用が可能となれば、公判前整理手続や公判の迅速な進行の支障となる恐れが指摘されています。

法改正後、証拠開示にあたって検察官に、このような裁量の余地が生じるものなのか、 法務大臣に確認します。 刑事施設内での電子データ化された証拠の閲覧環境の整備について質問します。 昨今、防犯カメラの映像をはじめ録音・録画などのデジタルデータが増えていますが、現在拘置所内で動画や画像を閲覧することはできません。今後法改正によって検察、弁護士間の電子データのやり取りがオンライン化されても、被告との間がオンライン化されなければ、結局弁護士が印刷して持ち込むほか手段がないことから、立法趣旨である刑事手続きの円滑化、迅速化の阻害要因となります。 電子データ化された証拠を保存した記録媒体、あるいはポータルサイトに直接アクセスすることにより被告人が刑事施設内で証拠を閲覧できる環境の整備を行うことなどが必要と考えますが、法務大臣の見解を求めます。

オンライン接見の普及に向けた取り組みについて質問します。 本改正案では、ビデオリンクの活用については、勾留質問、弁解録取、公判前手続期日、公判期日における出席が記載されていますが、オンライン接見に関する規定はありま せん。 特に接見に行きづらい遠隔地とのオンライン接見は、被疑者の権利を守り、刑事手続きの円滑化・迅速化を図る上で、極めて有効なツールとなります。 東京拘置所における外部交通となんら変わらない仕組みでのオンライン接見は可能と考えます。 期限を決めて速やかに全刑事施設でオンライン接見が行えるよう通信設備の整備を進めるべき、と考えますが法務大臣の見解を求めます。

証拠として取得した電子データに含まれる不必要な第三者情報の取り扱いについて質問します。 電磁的記録提供命令によって提出・押収された電子データの中には、当該事件とは関係のない第三者の情報が含まれている可能性があります。 誤って押収した不必要な第三者情報の使用制限規制や保管期間・保管方法の規制、期間終了後の消去義務規定などが必要と考えますが、法務大臣の見解を求めます。

電磁的記録を取得された当事者への通知のあり方について質問します。 本法案では、罪証隠滅を防止する観点から、電磁的記録提供命令に基づき、電気通信事業者などの第三者から電磁的記録が取得された場合、自らの情報を取得された当事者への通知規定が設けられていません。加えて電磁的記録提供命令を受けた者に対して、電磁的記録を提供したこと等を漏らさない旨の命令が罰則付で可能となっていることから、当事者はどのような情報が提出されたか把握すら出来ないこととなります。 罪証隠滅の恐れがなくなった時点で、当事者への通知はなされるべきであり、例えば秘密保持命令の終期を公判開始日にする、など基準を明文化すべきと考えますが法務大臣の見解を求めます。

秘密保持命令に対する不服申立(準抗告)規定について質問します。秘密保持命令に対する不服申立(準抗告)の規定について、電磁的記録提供者が事業者等である場合には、その事業者に対して不服申立権を認める内容となっており、名宛人ではない、本来の情報主体には不服申立権が保障されていません。

また仮に不服申立権が保障されたとしても、先に言及したとおり、秘密保持命令によって電磁的記録を取得された通知が届かなければ、当事者は適切に不服申立権を行使することができないこととなります。 不服申立権を適切に行使出来るよう電磁的記録を取得したことの通知の在り方については、更なる検討が必要と考えますが法務大臣の見解を求めます。

電磁的記録提出命令に伴う費用補償の必要性について質問します。 日本では、任意捜査、強制捜査いずれの場合にも費用補償の規定がありません。 これまでは、協力的な事業者が、事実上の記録提出対象者となっていたことから費用補償はあまり問題とはなりませんでしたが、電磁的記録提出命令は協力的な事業者のみを対象とするものではなく、罰則規定まで設けて対応を求める以上、その負担に対する費用補償の問題は今後の課題になるものと考えられます。 頻繁に電磁的記録提供命令の対象となる事業者は、担当部署を設置し、多大な人件費をかけて対応しなければならない状況が予想されますが、費用補償の在り方ついて法務大臣の見解を求めます。

供述内容を記録した電子データの作成・取扱いについて質問します。 電子データは紙媒体に比べ、差し替えや改ざんが容易である上、事後的検証が困難であ るとされています。従って「署名・押印に代わる措置」よる供述内容の確定、差し替え・ 改ざんの有無を検証できる措置が必要と考えます。 署名・押印に代わる代替措置として、タイムスタンプや電子署名などの活用が考えられるほか、事後検証のための措置として管理システムログ、文書メタデータを開示の対象とするなどが考えられますが、供述調書の情報保全についてどのような対応を図るのか、法務大臣の見解を求めます。

最後に、捜査機関が取得した電子データの利用目的を規制する必要性について質問します。 現在、捜査機関が保管する電磁的記録には、保管期間や目的外利用を規制するルールが存在せず、裁判においてもデータベースの目的外利用の問題点が指摘されています。捜査機関が必要のない電子データを長期に亘って保有し、使用できる現状は、個人情報保護の観点からも問題があり、電磁的記録の利用目的に規制を行う必要があるものと考え ます。この点について法務大臣の見解を求めて、質問を終わります。

ご清聴、有難うございました。

以上