党本部
2024年04月22日

【衆本会議】長友しんじ議員が食料・農業・農村基本法改正案に対する反対討論

長友慎治政調副会長(衆議院議員/宮崎2区)は19日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となった食料・農業・農村基本法改正案に対する反対討論を行った。討論の全文は以下のとおり。

食料・農業・農村基本法改正案に対する反対討論

2024年4月19日
長友 慎治(国民民主党・無所属クラブ)

 私は国民民主党を代表し、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に、反対の立場で討論いたします。

基本法は理念法です。しかし、理念が複数ある場合、そこには「あちらを立てればこちらが立たず」というトレードオフの関係がしばしば生じます。今回、改正される食料・農業・農村基本法は5つの基本理念を掲げていますが、その関係はどのように整理することができるのでしょうか。

例えば、現在の食料・農業・農村基本法の基本理念は「食料の安定供給の確保」「多面的機能の発揮」「農業の持続的な発展」「農村の振興」の4つを掲げています。この関係を説明すれば、「農業の持続的な発展」を図ることができれば、国内の農産物供給が確保されるので、「食料の安定供給の確保」は実現され、農地も有効に活用されて守られるので「多面的機能の発揮」も実現することになります。

そのため「農業の持続的な発展」から「食料の安定供給の確保」と「多面的機能の発揮」に一方向の矢印が引かれる関係になっています。また、「農業の持続的な発展」と「農村の振興」は手を携えながら、まさに「車の両輪」として進んでいくという関係が想定されています。そのため両者の間は双方向の矢印となっています。もちろん、これは青写真にすぎず、実際にはその通りにはいかないケースも見られますが、曲がりなりにも理想的な関係を描こうとしていました。現行法には1本筋の通った哲学が確かに存在しています。

しかし、今回の改正案では、そうした全体的な体系は示されていません。現行法の1番目に掲げていた「食料の安定供給の確保」に代わり、改正案では「食料安全保障の確保」と「環境と調和のとれた食料システムの確立」が新設されましたが、部分にとどまっており全体像が見えてきません。これまでの審議で見えてきたことは、政府は食料自給率を向上させ、国内への食料供給を増やし、農業を発展させようとしているのではなく、農業を輸出産業化することによって国内の農業生産基盤を確保し、それによって食料の供給能力を維持しようする姿勢です。

これは、第二次安倍政権が進めてきた新自由主義農政とまったく同じです。その時のロジックは次のようなものでした。少子高齢化によって国内農産物市場が縮小する一方、国際農産物市場は拡大しているので、国内農業を輸出志向型で発展させなければならない。そのためには、低賃金の外国人労働者に依拠しつつ、農業規模を拡大し、さらに法人化することでコストを下げ、輸出農産物の低価格化を実現する必要がある。そして、農産物の輸出拡大に向けて国内農業生産を拡大し、それによって食料自給率を向上させていく――。

しかし、このロジックが破綻していることは、安倍政権以降、食品・農林水産物の食料自給率が向上していないことから明らかです。この方針を続けるなら、いくら基本法を改正したとしても、食料安全保障を確保することはできません。さらに、食品産業の輸出が食料安全保障につながると政府は主張しますが、輸出といっても多いのはウイスキーをはじめとするアルコール飲料や、カレーのルーなどの調味料であり、その原料も国産の農作物ではなく、輸入品に頼っています。これでは日本の農家の所得の向上にも寄与しません。

また、2年前に成立したみどりの食料システム戦略が「農業」ではなく「環境」に区分された点は問題です。有機農業の栽培面積の拡大など、これまでの農業生産のあり方を根本から見直し、そこから新たな農村社会を展望することがみどりの食料システム戦略には求められ、期待されていましたが残念ながら今回の改正案に「有機農業」という言葉すら盛り込まれませんでした。25年ぶりに改正される基本法で「有機農業」が明確に位置づけられなかったことで、有機農業に取り組む現場の生産者は目標を失いかねません。やはりここはしっかりと盛り込むべきです。農業政策をころころ変えていると、生産者は「どうせまたすぐに政策は変わるだろう」と思い、政府がどんな政策を打ち出しても、まともに対応しなくなってしまいます。現に、農協と農林水産省の関係においてそのような場面が生まれていないでしょうか。

以上、本法案に反対する理由を申し上げ、討論を終わります。